金剛座寺

旧寺名を穴師(子)寺といい、寺史には『白鳳2年(673年)藤原鎌足有縁の草創』という説と、『白鳳9年(680)に鎌足の一子、不比等が開山した』という2つの説がある。
讃岐の四国八十六番札所志度寺の別当寺として十一面観音をご本尊にしていたという。
持統7年(693年)頃に不比等内妻の息子房前の母孝行に感銘を受け、房前が志度寺に母の姿として彫らせ奉納した如意輪観音を金剛座寺に遷座させ、行基菩薩開眼の上本尊にして内妻の菩提寺としたと伝えられており、「志度の観音さん」と呼ばれていた。
寺史にはその後、仏土寺(仏土山普賢寺)・戒光寺・継松寺・霊ケウ寺・南寺・北ノ坊・東ノ坊を有するまで発展したが、永享4年の地震による損壊、応仁2年、永正3年の兵火、天正年中の織田氏兵により焼失等、すべての古文書等が悉く灰燼し、それまでの寺史の詳細が不明となってしまっている。
その後この地を配下においた、北畠利貞氏や蒲生氏郷氏、藤堂高虎氏、紀州徳川氏より寄付高を賜っている。
寛永17年(1640年) に度会郡國束寺の僧であった良珠上人が入山し、相可大和屋五代広明が大檀那となり現在の本堂を再興する。
特に紀州藩主徳川治寶公には藤原鎌足公所有と伝われた寺宝の笙を献上し一行書を賜っており、その後紀州徳川家の菩提で供養を受けていた。
江戸中期には、伊勢国観音巡礼の第10番霊場として栄え、8月9日の縁日『夜観音』には大変な賑わいであったとされる。
江戸期から比叡山派であったが戦後、住職広橋貫廣は法友であった叡南祖賢の修験道法流発足に参集することとなり改派する。
30年の無住期間を経た現在は、染川智勇新住職のもと、復興整備作業が行われた。
平成13年に新客殿『戒光院』落成。15年多気町『歴史の道』に連なる金剛山頂に『神坂展望台』の設置。17年に『まちかど博物館「佐那文庫」開設』。平成19年に霊園『メモリアルパーク多気の杜』が開園され、東京からのお弟子さんと共に寺院の改修も進められている。